抄録:
 最初の抗うつ薬imipramineが1959年にわが国へ導人されて、2009年で50年の節目を迎え、さらに2010年はMAO阻害薬のpheniprazineとphenelzineが導入 されてから50年となる。しばらくはimipramine、amitriptylineを中心とするTCAと次々に導入されたMAO阻害薬の時代が続いたが、得難い効果を示したMAO 阻害薬が安全性の問題から徐々に撤退して1990年のsafrazineが最後となった。薬物療法の幅を拡げ、1980年には第二世代筆頭として異能のamoxapineが登場し、 優れた抗うつ作用と速効性には目を見張った。
 その後、四環系抗うつ薬が導入され、さらに1991年trazodoneが導入されて、うつ病患者の睡眠障害への効果を得た。そしてTCAの抗コリン作用を持たない 抗うつ薬をとの悲願から、新しい世代のSSRIとSNRIの開発が始まり、1999年fluvoxamine、2000年にはparoxetineとmilnacipran、さらに2006年sertralineが導入された。
 わが国ではSSRI、SNRIの導入が遅れて、恥を耐え忍んできたが、2009年、2010年と最後の大物mirtazapineとduloxetineが導入されて、世界からの遅れを 取り戻しつつある。さらに新しい抗うつ薬の開発は脈々と続いており、今日的うつ病薬物療法の新しい展望が期待されている。