抄録:
 医学、生物学の研究分野では、基礎、臨床分野を問わず病理免疫学的アプローチが有用である。最近の動脈硬化と癌の進展に関する研究結果を示し、他教室と病理との連携の重要性を示す。

動脈硬化研究

  1. 動脈硬化は炎症であるとの観点よりヒスタミン、ヒスタミン受容体の役割を検討してきた。
  2. その過程での岡部green mouse の骨髄移植に実験を行い、骨髄由来細胞が血管壁周囲に集積し、ヒスタミンを産生していることを見出した。
  3. ヒスタミン受容体欠損マウスに対する脂質負荷は、動脈硬化形成に関与し、アポトーシスと酸化ストレスを介して肝臓に重大な障害を引き起こす。 アポトーシスと酸化ストレスに関与する ASK-1 and PRDX4欠損マウスを使い、アポトーシスと酸化ストレスの動脈硬化への関与を検討した。
  4. しかしながら、マウスの脂質代謝はヒト脂質代謝と異なっているという弱点がある。そこで、ヒトに類似したマイクロミニ豚の動脈硬化実験の有用性を紹介する。

がん研究―ヒスプラチン感受性

  1. 癌細胞の薬剤耐性獲得には細胞増殖因子と抗アポトーシス因子が関与している。薬剤耐性獲に関与するYB-1, DbpC, BAF57, ZNF143, GalNAc-T3, mtTFAの発現は癌の進展に深く関与すことを示す。
  2. この薬剤耐性に関する研究の過程で、サーカディアンリズムの関与が示唆されたが、分子生物学的手法のみでは研究進展が困難であった。そこで、病理学的手法が有用であった研究例を示す。
  3. この研究過程の副産物として検討した‘毛髪再生’と‘結合組織新生と癌niche’について紹介する。
  4. 以上の蛍光免疫染色法にも欠点がる。これを克服する発光の応用の試みについて紹介する。